ソフトバンクグループの財務状況 その10

③ ハイブリッド債およびハイブリッドローンは残高の50%を有利子負債としてカウントしている

具体的には

2016/9発行 円建ハイブリッド債 4,710億円 

2017/7発行 ドル建てハイブリッド債 45億ドル

2017/11発行 円建ハイブリッドローン 840億円

← 劣後あるいは永久劣後の性格を持つ有利子負債であるため、バランスシート上で有利子負債なのか?資本なのか?という議論はあろう。

ただし劣後あるいは永久劣後といっても、清算の際は株式保有者よりは優先される。一般の無担保債権者に劣後するだけの話である。

従って株主価値の計算という観点では、理屈上も、また実際の企業価値の分配の際も有利子負債の計算には100%カウントしないとおかしい。

ただしLTVという有利子負債のカバー率(有利子負債に比べ資産がどれだけあるか?)の計算の場合は、一般の無担保債権者(無担保社債権者)の観点に立った場合はあきらかに劣後するので、有利子負債の計算には含めなくてもよいというのがオーソドックスな考え方であろう。

 

ソフトバンクグループの株主価値あるいはLTVの計算はこのあたりの理屈というか論理の運び方がファジーとなっている。

 

④ アリババ株マージンローンの取り扱い

LTV計算の際、”純負債”については有利子負債からアリババ株マージンローンの残高を控除する一方、”保有株式”について同残高相当分減額している。

← 保有株式そのものを担保に取られている状況に対応した調整であるが、先に説明した通り、実際担保に提供した保有株式が処分される場合は、担保に提供した保有株式全部が処分されて弁済に充てられる可能性も高い。

従ってマージンローンの残高を有利子負債から控除するならば、保有株式からは担保提供した株式全額を控除すべきであろう。

 

← アリババ株マージンローンと同じ仕組みのソフトバンク㈱株マージンローンに関する控除が反映されていない。

現状株式価値あるいはLTV計算に使用する多くの数値は2019/12末のため、2020年に入ってからのソフトバンク㈱株マージンローンが反映されていないのはやむを得ない面もあるが、試算する必要がある。

 

いずれにして元々 保有株式の額 >>>> 有利子負債の額 の環境において

LTV = 有利子負債 ÷ 保有株式

を計算する際に

分母、分子から同額を控除する調整は、LTVを実態以上に小さく見せかねない。

 

以上