ソフトバンクグループの財務状況 その12 総括

本件今まで検討の流れのままに書いてきて、話がまとまっていないので、一応総括をしてみる。

 

1.ソフトバンクグループとは

a. 現状は保有資産の核はアリババの株式 

 ソフトバンクグループ試算で約50%、当方試算で約57%

 他にソフトバンク㈱、Tモバイルもあるが、”一本足打法”とまでは言わないものの、アリババにおんぶにだっこ

b. 調達した資金を買収・投資に充てており、事業キャッシュフローは限定

 近時のビジョンファンドへの投資は借入によるエクイティー投資

 子会社的な事業キャッシュフローを生んでいるのはソフトバンク㈱のみ

 Armは不発、Tモバイルはこれから(しかも持ち分適用会社)

 

2.ソフトバンクグループの見方

a.  ソフトバンクを見る際、通常の企業分析の見方は意味がない

 会計上アリババは持分法で反映(利益は持ち分に応じ計上)するが、配当はゼロであり、この利益はそのままではキャッシュフローとして入ってこない

 また会計上ビジョンファンドの投資先評価に関しては公正価値のアップを利益計上しており、これもそのままキャッシュでは入ってこない

 連結の会計上の売上・利益はあまり意味がない

b. その意味でソフトバンクグループが試算する”株主価値”は投資会社的性格を反映した一つのアプローチ

 

3.”株主価値”はそのままではミスリーディング

a. しかしながらソフトバンクの試算する”株主価値”のロジックはソフトバンクに有利に見えるような単純な清算価値がベースになっており、いくつかの点で問題で、ソフトバンクの財務の実態を反映しているものとは言い難い。

例:担保に入った子会社株

  ビジョンファンド投資の不調

  on-goingな保有株式の処分(あるいは取得)

b. 株主価値を固めに試算してみると、1,855円/株でソフトバンクグループ試算の18%にすぎず、LTVも61%(cf. ソフトバンクグループ試算 18%)

 

4.近時のソフトバンクグループをとりまく環境および同社の対応

a. 市場動揺に伴う影響

株式市況悪化による銀行の対応変化あるいは格付会社の対応(Moodys格下げ)はある意味で当然

b. 4.5兆円の保有株式売却

4.5兆円の保有株式売却はやむを得ない対応であるが、その実行(タイミング、金額、方法)に関しては微妙なハンドリングを要求されよう

 

5. そして、今後は

a. 資産構成の変化

アリババ株なりソフトバンク㈱株はいわば”虎の子”であり、一部売却後のソフトバンクグループの資産の相対的な劣化は避けられない

b. 投資の真価

逆に言えばビジョンファンド投資が今後本当に大化けするのか?、Armは本当に飛べるのか?等々、アリババ、ソフトバンク㈱以外の投資の真価が問われよう

c. 銀行等債権者との関係

足元大型な起債ができる環境ではなく、また銀行から新規に無担保融資を受けることも容易ではないと思われ、慎重な対応を迫られよう

 

以上