ソフトバンググループの財務状況 その1
AA) 最近ソフトバンクグループに関する動きが慌ただしい。
1.ソフトバンクG、4.5兆円の資産売却 2兆円の自社株買い実施 :日本経済新聞
3.ソフトバンクG出資 英衛星通信企業が経営破綻 :日本経済新聞
ソフトバンクグループに関しては、近年孫社長のリーダーシップのもとで投資会社的色彩を強めて来た、という認識がある。ただしサウジとのファンド(Vision Fund)なども絡んでいるので、レバレッジ(借金)はそれほど高くないのではと何となくイメージしていたが、数字を見てみるとその有利子負債は絶対額として相当のレベルにあることに遅まきながら気づいた。
後で見るようにソフトバンクグループは相当額の個人向け?社債を出しており、単純にその償還は大丈夫なのか?という投資家的観点からソフトバンクグループの財務状況を分析し、私自身の企業財務の勉強の一環としていく所存。
ソフトバンクグループの開示はこの種のものとしては、かなり良くできていると思われるため、開示資料ならびに新聞等の報道資料に基づいてできる限り客観的に分析をトライしたいが、それなりに私見も入り込むと思う。お許し願いたい。
BB) まず直近の開示資料(主に2019/3Qの決算短信)に基づいて見てみる。
1.グループ全体(連結)の有利子負債(含リース債務)(2019/12末)
⇒ 19兆2,500億円
(内訳)
ソフトバンクグループ(親会社) 6兆7,061億円
資金調達子会社(2社) 1兆2,276億円
ファンド事業 7,216億円
ソフトバンク(携帯) 4兆1,099億円
Zホールディング 8,200億円
その他ソフトバンク事業 4,211億円
米国スプリント 4兆9,015億円
その他 3,420億円
とにかく私などは19兆円という金額に驚いてしまうが、例えばトヨタも販売金融にとてつもない金額が必要な訳で20兆円の有利子負債がある。
要は有利子負債をserviceできる(返済できる)だけのキャッシュフロー(あるいは見合いの資産)があるか? 借り換えが可能か?(新規資金調達が可能か?)ということがポイントとなろう。
トヨタ、1兆円融資枠要請 三井住友銀・三菱UFJ銀に :日本経済新聞
2.親会社ソフトバンクグループの有利子負債
ソフトバンクグループは親会社で傘下に事業会社を持つが、資金調達主体でもある。
6兆7,061億円の有利子負債の内訳は以下の通り借入(銀行借入であろう)もあるが社債が主体である。
借入金 1兆4,694億円
社債 5兆527億円
その他 1,840億円
社債の中身を見てみる。ホームページのIR欄に社債一覧(2019/12末時点)が出ている。
償還スケジュールでみると来年度の負担は1,498億円と比較的軽いが、その後は単年度に集中しないように分散されているが、毎年5,000億円から8,000億円の償還を抱えていることがわかる。
FY2020 1,498億円
FY2021 8,453億円
FY2022 4,838億円
FY2023 6,209億円
FY2024 5,771億円
FY2025 8,825億円
以下略
社債の種類としては以下の通り。
国内円建社債(福岡ソフトバンクホークボンド) 約2兆5,000億円
米ドル建社債 約6,200億円相当
ユーロ建社債 約6,700億円相当
劣後債 8,453億円(FY2021満期)
米ドルル建永久劣後債 約4,969億円相当
ハイブリッド債 約4,600億円
もうすぐ終わるFY2019も前半にソフトバンクボンドを3本発行し、計1兆円調達している。(上記金額にも含まれている)
シリーズ 発行月 金額 利率 満期
第55回 2019/4 5,000億円 1.64% 6年
第56回 2019/9 4,000億円 1.38% 7年
第57回 2019/9 1,000億円 1.38% 7年
とにかく桁外れの大型資金調達を実行してきたということがよくわかる。
以上取り急ぎ第一回の勉強は終わり
(なお私自身はソフトバンクグループ関連の投資エクスポージャーは有しておりません)