ソフトバンクグループの財務状況 その8
d. 4.5兆円保有株式売却と株式(アリババ、ソフトバンク㈱)担保借入の関係
4.5兆円の株式売却に関しては、どうも今後1年くらいかけてということらしいが、具体的な銘柄は明かされていない。
しかしながら金額および株式の市場性(売却可能性)の観点から常識的に考えて、第一候補 アリババ株、第二候補 ソフトバンク㈱、第三候補、スプリントであろう。
とくにCovid-19の問題が出た以降のマーケットにおいて当面ビジョンファンド関連の保有株式の売却は難しいと思われる。
その場合、アリババ株あるいはソフトバンク㈱株に関しては、
①まずソフトバンクグループが担保に提供した株式の売却を(貸手の同意のもとに)行うのか? そして担保借入を返済する。
②担保に提供しておらず手元にある株式のほうを売却するのか?
どちらなのかよくわからない。
アタマで考えると
①を選択すると、次に新資金調達を行うとき、再度残った株式を担保に入れることを要求されるのではないか?と懸念される。
②を選択すると、アリババなりソフトバンク㈱の株価が影響(下落)を受け、掛け目のトリガーを引いてしまう(担保借入の分の売却も始まってしまう!)というリスクも否定できない。
いずれにしても株価動向を見ながらある意味で綱渡り的なmaneuveringを要求されよう。
e. ソフトバンクグループの大型株式売却の経験・実績
ただしソフトバンクグループの近時の財務活動をレビューすると、以下のように相当額の保有株式売却をこなした実績があることは特記すべきであろう。
FY2016 スーパーセル株売却 7,698億円
FY2016 アリババ株売却 1兆750億円 (100億ドル)(先渡分を含めて)
FY2018 ソフトバンク㈱上場 2兆3,498億円
足元マーケットが悪い中でのお手並み拝見ということになるのだろうか?
f. 売却の際のキャピタルゲインに関わる税金
”株主価値”計算式の注には、”別段記載のない限り税金考慮前”との注記がある。
保有大型株のうち、ソフトバンク㈱株式はソフトバンクグループ(日本法人)が保有しているため、キャピタルゲインが発生すれば原則その分法人税がかかる。
アリババ株あるいはスプリント株に関しては、海外子会社(アリババに関してはシンガポール法人?)に保有させている可能性も大で、その時は海外子会社所在国の税制(シンガポールの場合、キャピタルゲインの税金はゼロ)によるが、低税率に対しては日本サイドでタックスヘブン税制にひっかかる可能性はありうる。
ソフトバンクグループは税務戦略においてアグレッシブであるため、どう見るか難しいが、売却の際に見込む市場価格に対するディスカウントに反映させて考慮すべきであろう。
以上
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