ソフトバンクグループの財務状況 その7
b. 子会社”日の出”のソフトバンク㈱を担保とした借入
ソフトバンクグループはごく最近ソフトバンク㈱株式を担保とした借入を実行した。
概要は以下の通り
実行日:2020年2月
借入人:日の出合同株式会社 ソフトバンクグループ子会社
金額:5,000億円
期間:2年(1年延長オプション)
担保:ソフトバンク㈱株式 953百万株 (ソフトバンクグループ保有分4,787百万株の約19.5%)
その他:ソフトバンクグループにノンリコース
貸手:外銀中心の模様
この組成の前後のソフトバンク㈱株価が1,400円―1,500円レンジであったことを考慮すると、本件の”掛け目”も5,000億円 ÷ (1,500円/株 × 953百万株) ≒ 35%
で、スカイウォーク(アリババ株)の時とほぼ同じであろう。
新聞観測では邦銀(みずほ)が3,000億円の資金調達をアレンジしようとしたが、まとめきれず、この担保融資に踏み切った模様だ。
c. 保有株式担保借入の評価、その影響
① ソフトバンクグループの他の債権者(社債権者、銀行)は無担保と思われる。ソフトバンクグループに何か不測の事態が起こった場合、その債権者的地位は担保権者に劣後するので、担保借入の増加はその地位を相対的に弱体化させている。
とくにソフトバンクグループが万が一苦境に陥った時、上記スカイウォークと日の出の借入はノンリコースなので、親会社としてのソフトバンクグループに返済義務はないが、逆に担保として提供中のアリババ株式、ソフトバンク㈱株式はその処分(タイミング、売却価格等)に関しては担保権者の一存による、ということになる。
もちろん株を処分して見合いの借入の返済をしても余れば、それぞれの子会社のもの、そしてソフトバンクグループに戻るということにはなるが。。。
注)FY2018のアニュアルレポートには有利子負債(担保付借入)に関し、以下の注記がある
”(注2) 2019年3月31日において、当社 100%子会社の長期借入金557,152百万円(2018年3月31日は842,313百万円)に対して、当該子会 社が保有するアリババ株式520,400百万円(2018年3月31日は363,384百万円()連結上の帳簿価額)を担保に供しています。当該借入 金には担保となるアリババ株式の時価の大幅な下落等の一定の事由が生じた場合、期限前返済となる条項が付されており、借入金の早期 返済を求められる可能性があります。なお、当該借入金はノンリコース債務のため、ソフトバンクグループ(株)には遡及しません。また、期 限前返済となる条項が発動した際に当該子会社が借入金の返済を行わない場合には、債権者は担保株式の処分が可能となります。”
つまり、この担保として提供済の株式はソフトバンクグループの保有資産として当てにできない、ということを意味する。
② 邦銀はおそらくソフトバンクグループへの一般の与信は無担保でやっているのだろが、外銀のようにしっかり担保を取るという発想はないのであろうか?
あるいは邦銀が新規融資でまとまらなかった背景もそのあたりにあるのであろうか?
以上